前回、大勢の人の前で講演することになったクライアントを例として、お話を進めていきました。
「緊張しないで、話したい」といった目標設定では、あまり効果がないということは、既にお伝えしましたね。
では、表現を変えてみましょう。
「人前で堂々と話せるようになりたい」
一見、うまくいきそうにみえますが、この目標設定も潜在意識を味方につける上では、あまり効果的とはいえません。
それは、なぜでしょうか?
原点に立ち返って、考えて頂きたいことが、実はあります。
クライアントは、なぜ 「人前で堂々と話すようになりたい」のでしょうか?
どんな状態を避けたくて、こういう願いを口にするのでしょうか?
もう、お分かりですよね。
「人前で堂々と~」という背後に、【緊張せずに】という強い願い・動機が隠されているからです。
実は潜在意識は、この前提すらも認識してしまうのです。
言葉に出さずとも、意識では考えないようにしても、無意識的に強く願えば、その状態を叶えてしまいます。
隠された願いが強ければ強いほど、「人前で堂々と話す自分」とはかけ離れていってしまうのです。
では、一体どうしたらいいのでしょうか?
彼が本当に、自分が望む状態を手に入れるには、コーチはどのようにリードをしていけばいいのでしょうか?
前回の冒頭で、山崎さんの言葉をご紹介しました。
「東大に合格する人は、東大合格をゴールにしない」
ここに、大きなヒントがあります。
「東大に合格する人は、合格の掲示板に名前が載ることを目標にしていない」ということです。
その代わりに、彼らがゴールにしていることは、たとえば、
「この教授のゼミに入り、研究を深めたい」
「毎日、赤門を通り、全国からやってきた学友と、こういう学生生活を送りたい」
彼らにとって「東大合格」は前提でもあり、すでに「予定」となっています。
その上で、どんな生活を送りたいのかをアリアリとイメージしているのです。
これから、願望を実現させるのに必要な、脳や潜在意識の仕組みの大きなポイントをお伝えします。
・潜在意識は、現実とイメージの区別がつかない。
そう、潜在意識は、肯定/否定の区別だけでなく、現実とイメージの区別もつかないのです。
「合格すること」が前提となり、予定となったら、潜在意識もそのように動き始めます。
では、そのことを踏まえて、話を元に戻しましょう。
人前で堂々と話したいというクライアントに対して、コーチはどのようなアプローチをすればいいでしょうか?
一つ、質問の例を挙げましょう。
「もし、あなたが望む状態を手に入れたとすると、
あなたは何をどのように話していますか?」
可能であれば、クライアントが、満員の参加者を目の前にしている状態をアリアリとイメージできるように、リードしてもいいかもしれません。
そのイメージを、事細かに言葉にしてもらうことも、非常に有効です。
「参加者のうなづいている姿がアチコチで見え、熱心にノートを取っています。
会場の空調がかすかに聞こえてきました。私の体も、だんだん熱くなり
額にじわっと汗が出てきました」
実際に、額に汗をかくくらいにイメージ出来れば、上出来です。
先ほどもお伝えしたとおり、潜在意識は現実とイメージの区別がつかないので、イメージをしたあなたを、本物の姿だと勘違いします。
場合によっては、クライアントにスピーチしてもらっても効果的でしょう。
NLPでは、願望を手に入れた結果、その先に手にしているものを「メタアウトカム」とよんでいます。
願望そのものではなく、それを得ることは既に「前提」と強く思い、得たい状態をどれだけ臨場感を持ってイメージできるかどうかが、実現するかどうかの鍵を握ります。
クライアントに臨場感をもったイメージを誘導するには、コーチもある程度、イメージ力をつける必要があります。さらに、コーチ自身も実感できる体験があれば、リードする言葉に説得力が増すでしょう。
ただし、それには訓練も必要ですし、時間も必要です。
まずは、今回お話したことを理解していただき、願望実現を「前提」として、さらに得たい状態を引き出せる質問をすることで、クライアントの願望実現に一歩近づけるかもしれません。
「もし、あなたが望む状態を手に入れたとすると、
あなたは何をしていますか?」

